Sony Cybershot U10, 5(33)/2.8

Photo: U10

Photo: U10

最近のソニーの CM に心動かされている、そこのあなた、ここの私。ベガエンジンで ホームシアターバイオでホームサーバー、そしてサイ バーショットでビジュアル・ブックマーク

例の、「ビジュアル・ブックマークしよう!」という鬱陶しい CM が流れ始めて一週間。テレビ、雑誌広告、街のポスター、あらゆる媒体から人類の海馬領域に侵入する「ビジュアル・ブックマークしよう!」。

さらに一週間、僕はついに「ビジュアル・ブックマークしたい!お願いだ、いますぐビジュアル・ブックマーク!させてくれ!」という状態に至っ た。(ソニーマーケティングの思う壺)


とはいっても、僕はソニー信者ではないし、どっちかと言うとあの強烈な独自規格に縛られて、デジカメから洗濯機に至るまで、家中の電気製品がソニー 化されてしまうことを恐れている。

だから、世に出ている他ベンダーの小さいデジカメで、ビジュアル・ブックマークできるやつはないか、いろいろ検討してみた。Panasonic Lumix F1 でかすぎ、Casio Exilim はパンフォーカスしかできないので却下、Minolta Dimage Xi のズームは不要。Toshiba sora がちょっと良さそう。でも結局、選択肢が無い。小さいデジカメ、というのはあるんだけれど、ビジュアル・ブックマークに比する明快なコンセプトを持った、 「道具」は無かった。

そして、なんというか最近実売価格が一気に安くなったし、「スタパ齋藤も褒めてるしいいんじゃないか?」という「いつもの論理」に帰着し、Web のショッピングカートにビジュアル・ブックマークデジカメ Cyber-shot U10 を放り込んだ。


Cyber-shot U10 はデジカメとしての性能を考えると、糞だ。というのは言いすぎだが、あまりたいしたことがない。しかし、これは多分、デジカメではない。感じとしては、そ の場所を Ctrl + C (Macだと、Cmd + C だっけ?)でコピーする。そういうニュアンスのデジタルデバイスだ。あれも、Ctrl + C、これも Ctrl + C。

あるいは、ビジュアル・ブックマークのためのデバイスにデジカメの形態を利用したのが U10、という言い方もできるかもしれない。だから、U10 の設計上の関心はオーナーにどれだけスムーズかつシームレスにブックマークさせるか、ということに集中している。

具体的に、U10 の使い勝手を見てみよう。レンズカバーと電源スイッチは連動しており、基本操作は、レンズカバーをシャッと開け、小さな液晶ファインダーを覗き込んで、適 当にシャッターバシッと押す。以上。解像度が低いので、32MB のメモリースティック(うげ?)でも 余裕で 300枚(VGA時)ぐらい撮れる。で、まる一日撮り終わったら PC に USB 経由で挿せば、勝手に画像転送 & 消去してくれておしまい。PC にたまった画像は、付属の i-Jump というソフトを使って、携帯電話にばしばし送れる。

撮って、貯めて、見せる。

U10 はとにかく使い勝手が軽い。現在の技術から見ると、貧弱とも言えるカメラとしてのスペックが故に、蓄積や転送といったとり回しの部分で大きな余裕が生ま れ、それが軽さに繋がっている。U10 の絶妙に「軽い感じ」がリアルとデジタルの垣根を、とても低くしている。なんというか、「サイバーだ!」と思ってしまう。と、分かったような分からないよ うな総括をしたところで、もう少し詳しく見ていこう。


U10 には MP3 再生機能とか、12倍ズームとか、500万画素CCD とか、そういう特筆すべき機能は無い。世界最小最軽量ではないし、安くもない。個々のスペックは平凡だ。しかし、考えれば考えるほど、いじればいじるほ ど、「これはアリだ」と思わずにいられない。

まず、大きさと形。もっと薄いデジカメもあるが、実際使ってみると薄すぎてうまくホールドできず、結局 U10 ぐらいのサイズが、きちんとホールドして撮れる限界だ。また、携帯を一回り小さくしたぐらいの絶妙なサイズは、見慣れた感じがして受け入れやすい。全体的 なデザインはどうみても高性能な雰囲気が無く、たいていの場所で使って威圧感が無い。(たとえ許可をとっても、一眼レフで食べ物を撮ったりすると、取材か と思われ、かなり用心される、、悲しい目にあう)


U10 の機能をみていくと、普通あたりまえにある機能が「無い」。カタログ上で負ける事を考えれば、機能を付けない、というのは当世の技術者にとって勇気のいる ことだと思う。しかし、必要なものを見極めて無駄を削いでいくという作業こそが、モノを造るという過程の中では、本当はもっとも大切なことなのだ。

ということで、U10 にズームはない。というか、むしろそんなものは、金輪際付けないで欲しい。U10 は肌感覚で、こんな風に撮れるだろというカンを養いながら、つまり単焦点の画角に習熟しつつ、どんどん撮るのが正しい。もしズームが付けば、ズームボタン が増え、液晶ファインダーは大型化を余儀なくされ、撮影方法も含めて、バランスが根本から変わってしまう。

そして、ズームがないかわりに、U10 はマクロに強い。しかもフォーカス距離に合わせて、マクロモードへは自動的に切り替わる。僕は、このデジカメで遠景を撮ろうとは思わない。むしろ、街のく だらないポスターとか、心に残るマズイ飯とか、そういうものをブックマークしたい。だから、マクロに切り替えるという操作が不要なのはとても良いし、 10cmまで寄れるマクロ性能はとても心強い。U10 はその性質上、接写での使用をかなり重視して設計されていると思われる。事実、マクロでの扱いやすさは、手持ちの Canon PowerShot G1 よりも上だと思うし、10cm の接写能力は例えば(こちらはマクロではないが) Contax T3 のそれを 25cmも凌ぐ。

ちなみに、ファインダーの液晶が小さいのは、まったく気にならない。見にくい、という評価をみかけるが、AF があっているかどうかは、分かりやすい緑円で表されるし、フレームミングは十分確認可能だ。だいたい、このカメラはそんなに覗き込んで撮るものではあるま い。AF 速度は、個人的にはとても速いと思う。(メインが MF なので、自信ない、、)


さて、一般的にデジカメを含めて最近のカメラは、「絶対使わないだろ」というぐらいの設定項目が多いが、U10 は比較的少ない。例えば、画質は固定だ。メモリ容量を考えてちまちまと Fine とか Normal とかそういう設定をするのが、僕は大嫌いなので、これはとても良い。画質はソニーが勝手に決めるから、その範囲内で工夫しましょう、という、そういう割り 切り感。画角は VGA と1,280 x 960 が選べるが、U10 本来の使い方を考えるとむしろ VGA で使いたい。画質も、VGA の方が発色・ノイズ・コントラストのあらゆる点で優秀だ。


Photo: 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, VGA.

Photo: 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, VGA.

画質はどうでも良い、とはいっても、ある程度は気になるので簡単に。4群5枚のレンズは、10cm の接写能力が売り。見た目は頼りないが、色味は十分に出るし、F2.8 と結構明るい。そのまま使って手軽さを楽しむのも良いし、あるいは、この程度の画質であれば、好きなように画質や画角をいじって、純粋に素材として使うの も楽しい。質感までは写らないけれど、ある種のポップな味が出るから、トイカメラに近い位置づけで使うのが正しいと思われる。

それから、明るめの空なんかを撮ると、櫛形に巨大な「しみ」みたいなノイズが出るので注意。


最後に、ちょっと困ったところを。まず、フラッシュが強すぎる。マクロで併用したりすると、真っ白になる。ただ、発光禁止の設定は、ワンアクション で可能であり、しかも電源 ON/OFF してもその設定が残るので、基本的に内臓フラッシュを使わない僕としては問題ない。巷の Tips としては、ネームシールみたいなものをフラッシュに貼ってしまうと、丁度良くなるらしい。

それから、付属の充電器は呪いがかかったように、充電がとろい。13時間ぐらいかかる。スペアの電池と、急速充電器が必須だ。

Photo: 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, VGA.
注1:ソニーの洗濯機、、。
注2:良くも悪くも全身ソニー、なデジカメなので、嫌な人は他のを買いましょう。一見初心者狙いの機種に見えるが、意外と、今もっているデジカメに不便を 感じている人が、2台目に買うモノなのかもしれない、、。
注3:その後 U10 は順調に後継機が出続け(って、まだ一年経ってないのに)、200万画素対応の U20、マイナーチェンジの U30、U40(2003年11月 14日発売予定)まで出ている。「なかったこと」になる製品が多いデジカメ市場では、珍しい。

OLランチ

Photo: 鯛茶漬け 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, VGA.

Photo: "鯛茶漬け" 2003. Tokyo, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, VGA.

ある日。出先で、午前中の仕事が一段落。皆で相談の上、今日は、このあたりで「OLランチ」にしてみようか。ちょうど、混雑も一段落して、ゆっくり食べられそうだし。


「OLランチ」の基本は、美味しいものを少しづつである。器も、ちょっとカワイクないといけないに違いない。どんぶり飯に、ガッツリと豚ショウガ焼きや、鯖みそをいただくというのは避けたい。

やってきたのは、鯛茶漬けランチが有名な(らしい)某店。で、素直に鯛茶漬けにする。豚角煮ランチを頼んでいる奴もいたが。というか、鯛茶漬け僕だけ?

お茶漬けは、こんなもんで腹いっぱいになるのかよ、という量であったが、それなりに食べた感じになるのは水分のせいか。で、すぐに食べ終わった。それにしても、角煮旨そうね、、。あ、お茶のお代わりは、いいです、、ええ、、。

行き止まり

Photo: 突堤 2002. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III, F.S.2

Photo: “突堤” 2002. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Vario-Sonnar T* 35-135mm/F3.3-4.5(MM), Fujifilm RHP III, F.S.2

年齢を重ねると、出来ることと、出来ないことがわかってくる。いや、多分、わかったつもりに、なってしまうのだと思う。

漠然と、こうなるはず、と思ったことが何も叶えられないこと。夢に至る道程の、あまりの遠さと、望みのないこと。


それに、時代だって、きっと夢がないのだ。あるバーのカウンターで、僕の隣に座った二十そこそこの男は、こんなことを言っていた。
「やっぱり金が欲しいですよ、お金が、でも、少しでいいんです。やりたいことだって、無いんだから、、」


学生時代が終わって、就職して、みんなそれなりにプロの世界で、きちんと働いて。もちろん、脱落してしまった人や、道を変えた人もいるけれど、なんとかやっていて。で、ふと見回すと、皆、固まっていた。

周りの皆が、当たり前のように、夢を目指していた季節は終わってしまったのかもしれない。飲みながら、ばかばかしい夢を語ることだって、なくなった。現実にどっぷりひたって、昔の自分は埃をかぶっている。

あんた、その歳で何考えてるの?と言われるかもしれないけれど、もうちょっと夢が欲しい。少し大きな夢は、それを失わないで持ち続ける人間だけが掴める、、。


そうだよね?じゃなかったら、どうやって進めばいい?