夕日

Photo: 霞ヶ関官庁街 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

Photo: "霞ヶ関官庁街" 2003. Tokyo, Japan, Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105.

新聞の片隅に出ていた年齢別平均年収のレポートには、ここ何年も上向かない景気を反映して、薄ら寒い数値が載っている。かと思えば、年収 5,000万円以上ターゲットの食品店の記事を、web で読む。メガ・コンペティションの時代のなれの果てが、これだ。

僕はと言えば、今月は仕事量も少なくて、あんまり実入りが良くないし、業界自体がレイオフの嵐で、どだい気分が良くない。なにもかもが不確実で、あらゆる局面でリスクをとるしかやりようのない時代だけど、本当に見返りはあるんだろうか?


霞ヶ関の官庁街を歩いていると、この国が貧しくなってるなんて思えないような、普通に豊かな景色。眩暈のするような夕日が差す国道を、無表情に歩く 人たちが居る。僕が日差しに立ち止まると、人の流れは、僕をよけ、どこかへ向かって動いていく。少しして、僕も彼らと同じ方に歩いていく。

夏の終わり

Photo: 夏の終わりの雲 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

Photo: "夏の終わりの雲" 2003. Okinawa, Japan, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8, JPEG.

夏が終わろうとする週末、キャンプにでかけた。天気予報は雨だったけれど、ちゃんと晴れた。僕は結構、天気に恵まれる。沢山道に迷ったり、火がおこらなかったり、焼きそばが焦げたり、とても楽しかった。

帰りに、「温泉に行こう」という思いつき。リーダーのあやふやきわまりない記憶を頼りに、山梨方面へ。「すごい良い温泉が湖畔にあったはず」という主張を信じて、河口湖畔をぐるぐる周回。いつになっても、着かない。


僕は助手席で、ほとんど役に立たない広域地図を広げながら、それっぽい地形と建物を探している。ふと、サイドミラー越しに、眠ってしまった後席の女の子の顔が見えた。あと暫く寝ててもらった方がいいなぁと思いながら、また同じ道を走ってる。

泣きそうな色をしていた空から日が差した。最後の夏の雲が、美しくわき上がっていた。いい午後だ。ずっとこうやって、何にもならない時間を過ごしていられたらいいのに。
でさぁ、目的地の名前は?思い出した?
「わかりません、、」
ほう。


注. その後、Webと携帯電話を駆使して、目的地を発見。湖畔とは無関係な場所にあった。

六本木のクソなバー

Photo: 札と落書きインターナショナル 2002. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX.

Photo: “札と落書きインターナショナル” 2002. Tokyo, Japan, CONTAX T3 Carl Zeiss Sonnar T* 2.8/35, Kodak EBX.

どうにも馴染めない飲み会。愛想笑いも精一杯。ようやく終わって、さて二次会に流れようかというところで、

「六本木にクソなバーがありますけど、どうですか?」

と声をかけられた。後ろの方を僕と一緒に歩いていた彼もまた、これ以上はうんざりといった様子だったから、こっそり列から離れてタクシーに乗った。


それは、店ですらなかった。二棟のビルの間の通路に屋根をかけて、カウンターをつけて、酒を並べてしまった空間。これって、廊下?本当にクソなバーだ。

「本当にクソですねぇ」

「ええ、まったく」

客は、極東の片隅の、クソなバーに流れ着いたクソなガイジンがほとんど。70年代あたりの曲が流れると、一人がカウンターの上に上がって、踊り始め た。多分、金をもってないのだろう、安酒を飲んで、めちゃくちゃなスタイルで踊っている。そんなクソなヤツを見上げながら、僕たちも安酒を流し込んで、戦コンはどうとか、そんな、クソな話をする。カウンターの上で踊ってるガイジンがウインクする。僕たちは、次のビールを瓶で頼む。

いろんな言語の落書きで、びっしり埋まった天井。挨拶か、名前か、罵詈か。そんなものが、六本木の片隅で淀んでいる。


注:コンサルは嫌いだ。