初めてのボーナスで買ったもの

Photo: RD600 2005. Sony Cyber-shot U40, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "RD600" 2005. Sony Cyber-shot U40, 5mm(33mm)/F2.8

初めてのボーナスの使い道は、Roland の 88鍵マスターキーボードだった。ピアノなんて全然やったことが無くて、でもどうしても欲しかったので買った。

でも、やっぱり弾きようが無くて、そのままほったらかした。そして数年。


少し前、ジャズシンガーと友達になってから、ライブにたまに行くようになった。エアコンの吹き出し口から、結露した湿気が霧のように吹き出す、そんな地下のライブハウスで「音楽」を聞いていると、ふつふつとこみあげるものはある。

Kurzweil を買うか、Roland にするか、散々迷って、鍵盤のオイルダンパーがしっかりしていたから選んだ Roland RD600。流石日本メーカー、ながらくほったらかしだったが、まるで劣化していない。実は、練習のための Sennheiser のヘッドフォンも、そのままの題名が清々しいテキスト「おとなのためのピアノ教本」も、とっくに揃えてあって、あとは鍵盤に向かうばかりではあったのだ。

何の目標があるわけでもなく、未だ何が弾けるわけでもないのだが、バイエルにも及ばないへたれ練習曲を無心に繰り返していると、頭の違う場所が起き始めて、ミュージシャンの恍惚、みたいなものが分かるような気になる。あと、手が筋肉痛。


関係ないけど、「トルネード竜巻」っていうバンド。名前のインパクトで言うと、空気公団以来なんだけど、気になる。ボーカルの声が、完全にストライク。

ぷりぷり

Photo: ぷりぷり 2004. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: "ぷりぷり" 2004. Tokyo, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

大人になったら食べられるようになると思っていたモノ。塩辛、コーヒー。

コーヒーは未だに好きじゃないが、塩辛は好きになった。


お土産のお裾分けでもらった、海老の塩辛。旨み成分のカタマリを食べているような、濃厚な味。ぼたんえびだと思うんだけど、塩味で引き締まって、ぷりぷりしてる。もらい物じゃなかったらお代わりしてるね。

故郷

Photo: 花火 2004. Kyusyu, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

Photo: “花火” 2004. Kyusyu, Sony Cyber-shot U10, 5mm(33mm)/F2.8

幼い頃に引っ越してばかりだった僕には、故郷と呼べるような場所はない。

その年の夏休み、遙か九州の田んぼの中の一軒家に集まったのは、僕の後輩とその幼なじみ達。一人九州に残って教師をやっている友達の家に、みんな 帰ってきた。彼らだけに分かる歴史を共有した、仲間達。彼らの思い出の土地と、懐かしい空気。僕はいろんないきがかりで、その中に混ぜてもらいながら、で も傍観者としてその景色を眺めている。

車のヘッドライトを照らしながら、ギターを鳴らして歌ったり、花火を打ち合ったり。そういうドラマみたいな、映画みたいな光景ってあるんだな。夜まで大騒ぎしても大丈夫、だって、隣の家は山の向こうだから。


自分に故郷があったら、僕はこうして帰ってくるのだろうか。あるいは、そもそも都会になんて行かないで、ずっとそこで過ごしたんだろうか。無数の可能性、でも、決して実現しない。「根無し草は強い」なんてよく言うけれど、それは間違っていると思う。強くあらねばならない、のであって、強いわけじゃな い。

ヘッドライトに照らされた顔を見て、故郷があるっていいなと思う。でも、僕の人生とは違うんだ、ということもよく分かる。寂しさとも、嫉妬とも違う、ちょっとした憧れぐらい。