zeiss マニアか?

Photo: 春景5 2008. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28

Photo: "春景5" 2008. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28

昔から日本人のイメージは、首から一眼レフを下げて眼鏡をかけて、というものだが、デジカメ時代に入って日本人のカメラ好きには一層拍車がかかったようだ。

桜満開の千鳥ヶ淵は、世界のあらゆるカメラが集合していた。携帯電話(大多数派)、コンパクトデジタル(多数派)、一眼デジタル(かなり居る)、フィルムコンパクト、一眼レフ、二眼レフ、ステレオ、中判、ピンホール。


さっきまで側らで超大型機材で撮影していた、明らかに本職の撮影チームが大判カメラを仕舞って撤収作業。その側らで、僕も zeissikonと、RX をケースにしまい込む。いや、それにしてもみんな持ってるカメラ凄いですよね、なんていうスタッフの話し声が聞こえてくる。

日本ぐらい、万人が道具に凝る国も珍しいのではないかと思う。それにしても、今年は殆どの人がデジタルカメラを使っていた。僕のフィルムを巻き上げる音は、その場所で少し異質に響いたほどだ。

次の撮影のために zeissikon に換えのフィルムを入れていると、アシスタントの人が僕の手元を暫く凝視していた。zeiss マニアか?

小さいもの

Photo: ハート 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

Photo: "ハート" 2008. Tokyo, Ricoh GR DIGITAL, GR LENS F2.4/28.

自分が小さいものであることを知ったところから、色んな事が始まるんだと思う。

Ricoh GR DIGITAL, GR LENS 2.4/28

Photo: GR Digital

Photo: GR Digital

凄く普通の、カメラだと思う。普通であることを、とことん考えたカメラだと思う。確実に動作し、確実な絵を残す。気がつけば、一年半弱で3,000 枚ほどを撮影し、日々持ち運ぶカメラとしては、日常での使用頻度が一番高いメイン機材になった。


4r のように取り出すだけで注目を集めるようなものではない。TVS Digital のように、考えもしないような絵を記録するわけではない。Canon G シリーズのように、絵や操作性にメーカーの主張があるわけでもない。取り出しても目立たない、撮った絵は大人しい、操作系には戸惑わない。だから、使い始 めた瞬間に面白くて、いろいろ撮ってみたいとか、人に見せびらかしたいとか、なんとしても使いこなしてみようとか、そんな風には思わなかった。

ただ、「さ、今日からこれで撮るか」そんな感じ。

そうして、直ぐに僕の日常のカメラとして、鞄に放り込まれ、液晶保護シートにはいつの間にかザックリ傷がつき、面白いような面白くないような、いろ んな写真を沢山、その中にため込んだ。健気な、というのが一番しっくりくるぐらい、これは道具なんだと思う。OXO じゃなくて、貝印、例えばそんな感じ。


後継機種も既に発表されているが、基本的な路線は同じなので、簡単にレビューを書いておく。(GR DIGITAL II は、AF 動作音が静かになったり、暗いところでの表現力がアップしていたり、液晶が鮮やかになっていたり、いろいろ改良されている。それでいて、並べて見ると、あ んまり違いが分からない、面白い。)

レンズは単焦点の 28mm(35mm フィルム換算)の F2.4、色収差さ周辺の流れなども少なく、デジカメレンズとしてはかなり優秀だと思う(室内撮影も多いデジカメの用途を考えると、もう少し明るくても良 いか)。デフォルト値でデジタルズームは切られている(はず)が、これはこのカメラのユーザ層を考えると、当然だろう。CCD は 800万画素、APS サイズでやるならこれ以上の高画素化は不要だろう。上がってくる絵はとても大人しい印象かつ、フラットな色味で、ある意味デジカメっぽい絵。個人的には、 トーンカーブなどを調整して、少しクセをつけたい感じ。コントラストなどはきちんと取れるので、あとからの修正にも耐える絵だ。

ボディ。全面黒、かつ滑りにくい加工。実質本意というか、こういう加工をすると、銀塩カメラのように見える。GR の特徴として、その絶妙なサイズが挙げられるが、これは使ってみると納得する。大きいとも、小さいとも感じない、そいういう不思議なサイズだ。これだけの サイズで、単4電池も利用可能で、内蔵フラッシュやアクセサリシューもある。一眼レフ並みに機能割り当て可能なダイアルを2つ装備しているのも凄い。大き さについては、不満はない。

このカメラのもう一つの良い点は、動作の速さだ。僕がコンパクトカメラを選ぶときの必須要件としている、レンズバリア付き、という点は、レンズをリ トラクタブルにすることで実現されている。使う度にレンズシステムが移動するので、精度と起動時間に不安を覚えるが、実用上問題は無い。動作時間、という 点で見ると、画像の表示(含サムネイル)や、設定画面の切り替わりなど、全体的にきびきび動く印象を持つ。ただ一点、不満なのはマクロ撮影時の AF 速度と、ピント精度だ。ファームウェアアップデートで改良されたようだが、それでもまだ遅く感じる。これについては、GRD IIが優れている。

さて、本体のデザインと対照的なのが、付属の画像転送ソフトと、画像ビューア。これは、他の Caplio シリーズと共用なのだと思うが、このセンスが、なんというか、摩訶不思議。カメラ本体の直感的な操作性とか、無駄のないデザインとか、そういったものは、 付属ソフトウェアからは感じられない。Windows 初期の謎のフリーウェアみたいに見える。画像ビューアは自分の好きな物を使えば良いとして、転送ソフトは安心感から言っても純正を使いたい。カメラを使え ば使うほど、使う機会が多いユーザーインターフェイスだけに、ここは改良して欲しい。iPod は別に欲しくないが、iTunes 以外の転送ソフトは、酷くて使い物にならない、と思っている人は意外と多いのだ。(画像ビューアを本気で独自開発したりすると、無駄にコストがかかるのは わかる。だから、そこはいい)


単焦点で、AF で、しっかりしたもの、となると、今の時点で買えるデジカメは、正直これぐらいしかない。あとはもう、M8に行くか、お遊びデジカメに行くか、そんな感じ だろう。初代発売から 2年をあけて、きちんと後継機種が出てきている、これはデジカメの世界では希有なことであり、なにより評価される点だろう。

追伸:付属の USB コードにノイズフィルタが付いている。なんというか、拘りなのかなぁ、と感心。