WordPressに移行

羊ページはblogではなかったし、そうするつもりもあまりなかった。数年前、NucleusとMovable Typeは実際に使ってみて、CMSでの置き換えができないか試してはみた。しかし、それは無理、という結論に達した。自分がやりたいことをするためには、かなりのカスタマイズが必要で、CMSスクリプト本体に手を入れることは、バージョンアップを不可能にし、結果、継続的な運用が不可能になることを意味する。


3度目の正直。blogのCMSとして、近年大きなシェアを持っているWordPressはCMS本体、周辺機能のプラグイン、デザインテーマの3つの要素が分離されている。相互の互換性の問題はゼロではないが、メインテナンス性を維持したまま、自分の求めるカスタマイズされたサイトを構築ができるのではないか?そう思って試してみた。

もちろん、CSSとjava Scriptを前提としたWordPressに移行することは、旧世代のブラウザとの互換性を破棄することを意味する。スタティックで軽量、かつHTML4に固執してきたこのページのポリシーを捨てるのか?という迷いはやはりあった。


決断したのは、iPhoneを使うようになったことが一番のきっかけだったと思う。レガシーな技術を使うことで間口が広がる、という考え方が、まったく意味を成さない。iPhoneを半年使って、そう考えるようになった。ホームページからblogへのパラダイムシフトが、更にtwitterにシフトしたことを目の当たりにした。そして、より柔軟な出力形態に耐える仕組みに移行しなければならないという、切実な感触を持ったのだった。

実際に、WordPressを使ってサイトをつくってみると、想像以上に自分のしたいようにカスタマイズができる。ひつじログを作ったときに、CMSの制約に縛られたLook & Feelに、読者の反応は拒絶に近い物があった。今までのページと全く同じものを再現する必要は無いとは言え(むしろ、それでは無意味だ)、Look & Feelはあまり違和感の無い形で移行したかった。3度目の試みでそれができるのではないか、という感触を持ったのだ。


標準のテーマを最小限の改造と、プラグインの追加でそれを実現できないか。約二ヶ月、ちょっとずつ試してきた。実際にやってみると、CSSはほぼ作り直しになったが、スクリプトの変更は最小限に抑えることができた。サイトの雰囲気は、それほどには、従来のサイトと変わらない感じになった(なってるといいなぁ)。そして、HTML4で停滞していた、自分のWebサイトデザインの諸々の知見も一緒にアップデートすることが出来たように思う。


最も大変だったのは、手動でコンテンツをCMSに移行していく、果てしない作業だったが、というかまだ終わっていないのだが、1,000コンテンツ移行し終わったので、ひとまず公開することにした。

Webサイトは、永遠に完成しないものであり、リリースしながら作り替えていくことこそ、ネットの本質。ということで、ひとまずWordPress版羊ページをここにリリース。

追伸:なので、iPhone, andoroid, ガラケーからも自動的に生成される専用画面で閲覧可能になりました。RSSフィードも出してますし、サイト用のtwitterアカウントもあったりします。

移行中、、

WordPressに移行中。

Movable Typeの分は、インポートできたのだけれど、圧倒的なボリュームを占める手打ちのHTML部分は当然、自分で移行するしかない。

構文は結構揃えてあるので、スクリプトとかを頑張れば(あるいは出来る人を、うまい棒等で雇えば)なんとかなるような気もするのだが、、。この際なので、構成を見直しながら、手でやっていくことにしてみた。

その過程で15年分の自分の文章を、ずっと読むことになっている。実は、全部読み返すというのは、いままで多分、やったことが無い。苦笑する部分も、感心する部分も、あきれる部分もある。でも、書いてて良かったとは思う。


Webに書いてること自体が、面白かった時代から、ネットが広がってく中で、そういうものを仕事にしている楽しさの時代、そして、そういうのが当たり前になってしまった後に、模索している時代。

密度が濃いような、薄いような15年。でも、やっぱあんまり変わってないかもしれない。

注:注釈表記のテスト中。

カレー食べ放題

Photo: Curry - free reffils 2010. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

Photo: “Curry – free refills ” 2010. Tokyo, Apple iPhone 3GS, F2.8/37.

その日、僕は昔勤めていた街に、久しぶりに足を向けた。昼には、昔良く行ったトンカツ屋に行こう、と決めていた。朝から仕事をして、昼が近づいてお腹が空いてくるにつれ、独特の衣のトンカツと、定食に付いてくる、ちょっと変わった漬け物の姿が、浮かんできた。昼、部屋ををそそくさと出ると、僕は冷たく細かい雨の中を、店の方角に歩き出した。街はあまりにも久しく、途中で一回道を間違えた。


いよいよ店が見えてくる。しかし、暖簾が収まるはずの場所には空白が。店の扉になにやら紙が貼ってあり、嫌な予感がする。幸い、店はまだ閉じられた訳ではなかった。ただ、真新しい張り紙によれば、もうランチの営業はしていないのだった。

まずい、これはまったく想定していなかった。腹が減っていて、雨が降っていて、トンカツを食べるはずが路頭に迷っている。こういう時、間違いなく僕の今日の昼飯は「外し」になる。避けようが無い。それは僕の経験からも、あらゆる食べ歩きの書物からも、明らかな真理だ。逃れられない、運命だ。


それでも、僕は無駄なあがきをすべく、無理矢理考えついた二番手の店に向かって歩き始める。

一番新しいネクタイを危険にさらすことは承知で、通り沿いの焼肉にしよう。とびきりうまいわけでもないが、リーズナブルで懐かしい。しょぼいワカメスープも、今なら美味しい。しかし、というかやはり、焼き肉屋は、意味不明なセンスの居酒屋に変わっていた。しかも、その居酒屋までもが店仕舞いしてい た。よろしい、これは想定の内だ。更に歩く。ちょっと遠いが、懐かしい中華料理屋で名物の湯麺を食べることにする。残業の途中でよく食べに行った。

床がヌルヌルして、厨房には下ごしらえで切られた野菜が笊に山盛りになっている。活気があって、台湾の下町のような匂いがする、、はずの店は、区画丸ごと、とびきり大きなタワーマンションになっていた。フロントにコンシェルジュ付き。

こうなれば、iPhoneに全てを託すしかない。食べログアプリを起動し、GPS周辺検索でランチトップに来た店に迷わず向うのだ。1位、中華料 理、ランチ平均予算2万円。無理。2位、カレー、ランチ平均予算千円。よし。ここにしよう。昔から店名だけは知っていたが、行ったことが無かった。


「お皿を取って、好きなだけ盛って下さい」

あまりの展開に、僕は業務用ジャーのご飯を大盛にし、巨大な豚タン入りのポークカレー(甘口)をかけていた。ポテトサラダを反射的に載せ、もやしの ナムルでバランスをとった。らっきょうを大量に追加した。なんだここは、カレーバイキングの店なのか?システムが分からない。席について、なにがなんだか 分からないまま、カレーを食べる。どんな状況でも、カレーはうまい。むしろ、カレーがまずいってのは、よほどのことだ。

直ぐに、左隣に二人連れのサラリーマンが座る。店を紹介したと思われる方の男は、太っている。

「ここは何度でもお代わりできるんですよ。xxなんか、いつも 4回はお代わりしますよ。僕はもう、ここ以外でカレーを食べる気がしないです。そうそう、xxなんか若いから沢山食べるんでしょう、いいと思いますよ、ここ」


うんざりだ。そう思った。カレー千円で食べ放題の店。おかずも盛り放題。お代わりし放題。それはつまり、デブまっしぐらではないか。まもなくして、 右隣にも、太った男が座る。太った男に挟まれてカウンターでカレー。まったくもって、うんざりだ。だいたい、俺は別にカレーなんて、食いたくなかったじゃないか。新しいネクタイにカレーって、最悪じゃないか。しかも、食べても食べても減らないのは、実は皿がとんでもなくでかいってことじゃないか。

しかし、もう遅い。空きっ腹をかかえて、冷たい雨の中を歩くよりは、食べ放題カレーでお腹が苦しい方が、いくらかは幸せなのだ、きっと。

左隣の男は、カレーのお代わりを盛りに行った。僕は大急ぎで残りを食べきって、外に出る。雨は止む気配は無く、しかしカレーのお陰で体は温かい。ネクタイも無事だった。満腹すぎるほど満腹だ。まあ、来年ぐらいに、もう一度食べに来てもいいか。