程よくぬるいトマトジュースをサーブされ、プロペラ越しの日本海を見ている。紅い果実が描かれたパッケージを見て、何か素敵なロシアの果物かと思ったのだが、なんてことはない、トマトジュースだった。ぬるいトマトジュースって、厳しい。
成田からたったの2時間半、ウラジオストクには1日1往復の定期航路が開設されている。ただし、プロペラ機だ。もちろん、ツポレフとかスホーイとか、イリューシンとかを期待したが、とっくの昔にボンバルディアに代わっていた。ロシア国外での型式証明とか、そういう問題もありそうだ。
ロシア人は寡黙、という僕のイメージは既に崩れている。ゲートの待合でも、ロシア人達はお喋りしっぱなしだったし、僕の前のロシア人ビジネスマン2人組は、プロペラ機の騒音の中で、もう1時間も喋りっぱなしだ。男も女も、とにかくよく喋る。
やがて、ロシアの大地が見えてくる。
国土地理院の等高線模型のような、緑一面の山。飛行高度から見ても、山奥すぎて震えるような場所に、細い道でつながる建屋数軒の集落が有る。こんな場所で越冬するかと思うと、震える。
突如、森をぶった切って真っ直ぐな道路(用水路のようにも見える)が地平線まで続く。さしずめ、現代版ナスカの地上絵のようだ。共産主義の勝利を讃えるような、無茶苦茶な真っ直ぐさ。
まさに、おそロシア。