冷や汁をつくる

Photo: 冷や汁 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

Photo: "冷や汁" 2010. Tokyo, Japan, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

ちょこっとした事のお礼に、冷や汁の素なるものを貰った。まさに情けは人のためならず。

早速、涼しそうなあらゆる材料を買ってきてみる。大葉、豆腐、オクラ、茗荷、胡瓜。刻んでいるだけで、その香りが涼しそう。茗荷は多分、ややアレルギーなんだけど、この際あえて刻んでいこう。


ちょっと大盛過ぎる具が出来上がり。冷や汁の素をかけてみたら、なんか全然足りない。2食分もらったので、一気に使い切るという手もあるが、なんとしても二回食べたいので、あえて「冷やダレ」みたいな状態で食べた。

やはりこれは食が進む。フェリーに乗り遅れそうになりながら、宮崎で食べた冷や汁を思い出す。

ごちそうさまでした。

太平洋を遮る洗濯物

Photo: 洗濯物 2004. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3

Photo: “洗濯物” 2004. Japan, Contax RX, Carl Zeiss Planar T* 1.4/85(MM), Kodak EB-3

おまけ。

ようやくたどり着いた宮崎。輝く太平洋を遮る洗濯物はなんですか。


昨日ホテルにたどり着いた時には、もう 10時をまわっていて、レストランは軒並みラストオーダー。そして、ここはリゾート地だけに、飲食店なんか何もない。

コンビニか、コンビニしかないのか。500円の塩豚カルビ丼が晩飯。地鶏焼きの真空パックをつまみに、餞別にもらった泡盛を飲みながら漆黒の闇を眺める。なるほど、オーシャンビューって、夜は真っ暗な訳か。


翌朝

今年の夏はやたらに暑い。太陽の降り注ぐ太平洋上の甲板では、立っているだけで汗が噴き出す。適当に持ってきた着替えが、直ぐに底をつく。かといって、Tシャツの売値より高いホテルのランドリーサービスに出すのもなぁ、、。ということで、洗って干されるシャツ達。高級リゾートホテルで洗濯してはいけ ません。

楽園を見にいく

Photo: イチジクとメロンの前菜 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

Photo: "イチジクとメロンの前菜" 2004. Contax Tvs Digital, Carl Zeiss Vario Sonnar T* F2.8-4.8/35mm-105

今回の旅の目的の一つに、「楽園を見にいく」というものがあった。知り合いの両親が、阿蘇の山裾でレストランを開いている。それは、テレビ番組でも 取りあげられた。東京での生活にピリオドをうって、阿蘇に移り住んで、レストラン経営。ある種、画に描いたような話だ。それって、実際どうなんだろう。

カーナビに店名を入力すると、ちゃんと登録されていた(!)のだが、アホなナビは山側から回り込むという非常に難易度の高いコースを設定し、藪を乗り越え、岩陰を抜けて、なんとかたどり着いた。(下からいけば、普通の舗装道路から易々と行けたのだが)


店は手作りで一から建てたという、南仏風の白い建物。庭に向かって大きなテラスがつくられていて、そこからはすぐ近くに阿蘇の山が望める。僕たちは そのテラスに作られたテーブルに通された。山裾の風が吹抜け、白と青のクロスに、籐の椅子が気持ちいい。料理は奥さんと、2人の女性がつくる。メニューを いろいろ見て、せっかくなのでコースを頼んでみる。(正直腹ぺこだった)

いただいたワインを飲みながら、山を眺めていると、シャイな感じのご主人が料理を運んできてくれた。イチジクとメロンを盛りつけたフルーツ仕立ての前菜が目に清々しい。しっかりしたイチジクの実や大粒のラズベリーに、自然のものを食べている喜びがある。

暫くして、不意に蜩の声が止むと、朗々とした雷鳴とともに激しい夕立が訪れる。あっという間に気温が下がり、心地よい。阿蘇の山が雨に霞む。この季節、夕方にスコールのような雨が降るという。


ラタトゥユのごろごろした野菜。全粒粉の香ばしいパンと、よく煮込んだシチュー。バジルの濃い香りに酔うパスタ。お世辞でもなんでも無く、美味い。 メニューのバリエーションは多くない、その分、料理はしっかり考えられている。口に含んだ料理の香りが一段も二段も違う、こんなに強い素材は、土と太陽の ある所でなければ食べられないのだと知る。そう言えば、このテーブルに座ってから、ハーブの強い香りがずっとしている。庭に植えられたタイムの葉だ。

「これは戦いみたいなもんです」

阿蘇の気候で庭を造り、店をきりもりする。日々は、生い茂る植物との戦いだと言う。日本の気候の中で、自分たちの理想とする世界を手探りでつくろうとする難しさ。

それにしても、最初これって本当に儲かるのか?という気がしたけど、お客さんがちゃんと来る。僕たちが食事をしている間にも、ジャガーのセダンに 乗った品のいいカップルが、お茶を飲んで帰っていった。楽園は、そこにあるものではなくて、つくるものだと知る。ここには、楽園を作ろうとする想いがあっ た。