ラスベガスから、どこへも続かない道

Photo: “Last meal.”

Photo: “Last meal.” 2018. Las Vegas, U.S., Apple iPhone 6S.

“A desert road from Vegas to nowhere..”

ヘッドフォンの向こうでホリーコールが歌っている。飛行機はベガスの空港から動かない。

操縦室のドアが開きっぱなしで、パーサーとパイロットが何やら話し込んでいる。機体の調子が悪いのか、単に何かの順番待ちのような事なのか。なんのアナウンスも無く、小一時間地上から動かない。


調子が悪いなら、飛ばないで欲しい。そういうのを無理すると、やっぱりな感じで事故になるんだよ、とエンジニア的に思う。トラブりそうなものは、トラブるのだ。

陽炎に揺らぐ滑走路をひたすら眺める。こんな薄汚い機械の狭間で、一生を終えるのか、という気持ちがある。

歯が溶けそうな巨大なクッキー、あるいは粘土。

Great American Cookie Company

Photo: "Great American Cookie Company" 2011. Las Vegas, NV, US, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

「サンドイッチの他に何かいる?」

って聞かれても、ワッパーしか頼んで無いぞ。と思ったら、ハンバーガー類は全部 “Sandwich” 呼ばわりなのか。そんな用例、学校で習わなかった。

ちょっと庶民的な、というか、西友っぽいショッピングモールに来ている。同僚が「燃料切れです、腹が減りました」というので、お約束のバーガーキングでおやつを食べる事にする。


フードコートだから、他にも選択肢は有ったのだが、店員に全くやる気が感じられずフレッシュにも見えない「Fresh Deli & Grill」と書いた弁当屋とか、「メーン!」的な会話で店員同士が盛り上がっているチキンハンバーガー屋とか、歯が溶けそうな巨大なクッキー(もしくは粘土)屋とか、はNO!だ。

ワッパーとフレンチフライ、コーラ。実に、安定感のある、バーガーキング。アメックスはサインレス一撃で通るのがアメリカっぽい。レシートを見たら、アンケートに答えるとワッパーをもう一個だそうだ。

「日本で試してみます」

と言っていた同僚は、無事に二個目をゲットできたのだろうか。結局、おやつというには量が多すぎで、そのままそれは夕食になった。

コーラより、水が高い国。

road

Photo: "road" 2011. Las Vegas, NV, US, Ricoh GR DIGITAL III, GR LENS F1.9/28.

朝、カンファレンス会場に着く。アメリカのイベントの開始時間はやたら早い。アメリカだけではない、アジア・パシフィックの人間も、放っておくとカンファレンスの開始時間の設定を 8時とかにしようとする。多分、日本が遅いんだろう。それは別に、「彼らが勤勉だから」では無い。満員電車の通勤時間がほぼ無い、という前提があって初めて、成り立つものだ。


外の気温は、まだそれ程上がっていない。しかし、室内の冷房は容赦なく、フリースを羽織っても少し寒い。食べものコーナーから、温いコーラの缶をとって、少し飲む。朝からコーラ、ありえないが、それぐらいしか選択肢が無い。水とコーラが、多分同じ位の意味なんだろう。なんていうか、いろんな意味で、厳しい国なんだと思う。コーラは別に高くない、でも、水は時々コーラより高かったりする。

今朝は、会場まで歩いてみた。24時間営業しているカジノには、早朝から客が居た。徹夜明けハイテンションで、ゲームをやっている。カジノから路上に、強烈な冷房の空気が、煙草の匂いと共に吹き出している。ストリップ通りに向かう街路では、市に雇われた業者が、路上を徹底的に掃除して、昨夜の騒ぎの痕跡を、跡形も無くしていく。それが、毎日、繰り返されているのだろう。


この会場に居るのは、ある程度のエリートクラスだろうか?お金は、平均的なアメリカ人よりも沢山もらっているだろう。階層が高いかといえば、そんな事も無いのかもしれない。入れ墨をしたエンジニアが多いのに、びっくりした。

朝一のセッションはまだ始まらない。プリンシパルアーキテクトの肩書きを持った、子熊の様なおっさんが演台に立っている。昨日、僕の後ろで MacBook で熱心にノートをとっていたアジア系が、今日も反対側の列に居る。ごっついスピーカーから、ライトなメタルが曲が流れている。

突然思い知る。ここは、アメリカなんだ。